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【イベントレポート】「APPS JAPAN 2019」~お客様の健康を導くヘルスケアサービスに必要なもの~

四方 裕 APPS JAPAN 2019の登壇の様子

2019年6月12日(水)~6月14日(金)の3日間、幕張メッセで「APPS JAPAN 2019」が開催されました。アプリ関連としては日本最大級となるこのイベント、開発の最前線を担うエンジニアや研究者が集い、毎年10万人以上の来場者を記録しています。

第6回目となる今回、DeNAヘルスケア事業部から、元海上自衛官の経歴を持つ、iOSエンジニア、四方 裕(しかた ひろし)がセミナー講師として登壇。ヘルスケアとアプリに関する最新動向やヘルスケアサービス開発のノウハウについてプレゼンしました。

当日の模様をお届けします。

Healthケア型のサービスで持続可能な社会へ

APPS JAPAN 2019 会場の様子

▲会場の様子。

四方 裕(以下、四方) こんにちは。DeNA ヘルスケア事業部の四方です。DeNAのヘルスケアというとまだまだ馴染みの薄い方もいらっしゃると思うので、まずはDeNAがヘルスケア事業を始めた背景から簡単にお話します。

直接のきっかけは、弊社の代表・南場の家族が体調を崩してしまったこと。看病のために南場自身の仕事がままならなくなり、そこでヘルスケアサービスの大切さに気づきました。

さらに広く社会に目を向けてみると、2025年には団塊世代が高齢者になって働き手が減り、医療費は増え続けます。「このままでは持続可能な社会を実現できない」という課題意識から、DeNAのヘルスケア事業はスタートしました。

現在はDeNAライフサイエンスとDeSCヘルスケアという2つの子会社を設け、遺伝子検査サービス「MYCODE」や、歩数計測アプリ「歩いておトク」、健保組合・健診機関向けの「KenCoM」といったサービスを運営。さらに社外のパートナー企業との共同研究やR&Dに取り組んでいます。

事業全体としてのミッションビジョンは、「健康寿命を延ばすこと」。病気になってから治療する「Sickケア型」ではなく、アプリなどを楽しみながら病気を未然に防ぐ「Healthケア型」のサービスを提供し、持続可能な社会を実現するのが僕たちの役割です。

DeNAがヘルスケアで実現しようとしていること 四方 裕の登壇資料より抜粋

ヘルスケア×アプリの最新動向について

四方 健康寿命への関心が高まるなか、数多くの企業がヘルスケアサービスを提供していますが、そのなかでも象徴的なのが生保業界だと思います。ここ2~3年、「ヘルスケア型」と呼べる新しいタイプの生命保険が増えてきました。

ヘルスケア型保険+付帯サービスアプリ 四方 裕の登壇資料より抜粋

従来型の生命保険の多くは、健診結果によって保険料が決まり、病気になってから給付金が支払われます。この仕組みだと、日ごろから健康をケアしている人と、まったくケアしていない人、つまり病気の罹患リスクが低い人も高い人も支払う保険料は変わりません。おのずと不公平感も募ります。

それに対して、日々の健康への取り組みから保険料が決まるのがヘルスケア型保険。身長・体重などの身体測定値、1日の歩数、食事記録といったデータをスマホ端末の機能やアプリを使って取得し、それを保険会社がスコア化することで保険料が決まります。

つまり、契約者は保険料を抑えるために自分からヘルスケアに取り組み健康になる、一方で保険会社にとっても給付金の支払いのリスクが下がるという、Win-Winの関係が築ける仕組みです。

DeNAでもメットライフ生命さんや朝日生命さんと共同プロジェクトを起ち上げ、さまざまなの付帯サービスを組み込みながら開発を進めています。

ヘルスケアの手段としてアプリが優れている3つの理由

四方 続いてはヘルスケアとアプリの相性について。ヘルスケアサービスの実現手段としてアプリが優れているのには大きく3つの理由があります。

なぜヘルスケアの実現手段がアプリなのか 四方 裕の登壇資料より抜粋

まず、何より大きな理由は、お客様の活動データや身体データを集約できること。iPhoneを例に挙げると、iPhoneには初期状態から「ヘルスケア」というアプリがインストールされていて、これをONにしておくだけで毎日の歩数が記録されます。

さらにお客様が自分でインストールした健康系アプリのデータ、たとえば運動量や摂取した栄養といったデータまで集約し、グラフ化したり、XML形式で書き出したりすることが可能です。

2つめの理由は、プッシュ通知などを通じてお客様の行動変容を促せること。iPhoneの場合、「ヘルスケア」アプリを起動していなくても、「水分補給の時間です」といった通知を出し、お客様は実際に補給した水分量をワンタップで記録できます。

また、iPhoneには「Today Extension」というウィジェットがあって、これを使えば毎日のTO DOリストとして、「歩く」、「野菜を食べる」といった項目を表示することが可能です。アプリを閉じた状態でも「今日は歩数が足りないから歩いて帰ろう」という気づきを促せるわけです。

加えて、こうした通知やウィジェットは、一定期間サービスから離れていたお客様が復帰する導線にもなり得ます。

ヘルスケアにアプリが効果的な3つめの理由は、スマートフォンが常に持ち歩くデバイスとして広く普及していること。生活に欠かせないツールのなかでデータを蓄積したり、通知したりできるので、サービスを継続利用してもらいやすいんですね。

ちなみに、最近ではスマホに加えてApple Watchのお客様も増えてきました。バッテリー容量などの問題はあるものの、Apple Watch 4からは電気心拍センサーが搭載されており、アメリカでは心電図機能として使うことが認められています。

「行動ドライバ」でヘルスケアサービスの継続利用を促す

四方 ここからはサービスの方向性や運用面についてお話したいと思います。

ヘルスケアサービスでは、お客様に継続利用してもらうことが何より大切です。サービスの性質上、成果を得るには一定以上の期間を要しますし、「行動変容ステージモデル」という学説でも、人間が生活習慣を変えるにはさまざまな働きかけが必要で、実際に健康管理を実行して維持するようになるまでには6ヵ月かかると言われています。

ただ、その一方、スマホアプリの利用継続率はインストール1ヵ月後で平均10%未満。9割以上のお客様がインストールから1ヵ月を待たずに利用停止してしまっているんです。ヘルスケアアプリでお客様の健康寿命を延ばすためには、このギャップを埋める施策、つまりサービスを継続的に使ってもらうための仕組みづくりが欠かせません。

そこでDeNAでは「行動ドライバ」という考え方を取り入れています。簡単に言うと、お客様の行動変容を継続させるための仕組みで、大きく3つに分けられます。

1)インセンティブ

1つはインセンティブ。

DeNAのサービスで例を挙げると、歩数計アプリの「歩いておトク」は、名前の通り一定の歩数をクリアするとdポイントが付与されます。

また、健康増進支援サービス「KenCoM」は、お客様がヘルスケア関連の記事を読んだり、イベントに参加したりするとポイントが付与され、そのポイントを使ってAmazonギフト券などの抽選に応募できる仕組みになっています。

有形インセンティブの事例 四方 裕の登壇資料より抜粋

一見子供だましのようにも思えますが実際の効果は非常に高く、検証用に作ったアプリにおいて「1週間のうち4日以上、8,000歩以上歩いた人には、Amazonのギフト券300円を付与する」という条件で2ヵ月間テストをした結果、お客様の利用継続率は90%をマークしました。

2)ピアプレッシャー

2つめはピアプレッシャー。

ピアプレッシャーとは同じ目標を持った人と一緒に何かに取り組むと、お互いにプレッシャーをかけあって継続しやすくなるという事象です。

僕自身、自衛隊にいた時に1日300回の腕立て伏せをしていましたが、1人ではとてもできません。でも、同期や同じ部隊の人と一緒にやるとできるんですね。「この人に負けないように頑張ろう」と。

DeNAでは「KenCoM」の中で、「みんなで歩活(あるかつ)」というウォーキングイベントを開催しています。健保組合のなかでチームを2つに分けて、2ヵ月間の歩数を競うと、普段4,000歩くらいしか歩かなかった人が1万歩以上歩くという結果が出ました。

ピアプレッシャーの事例 四方 裕の登壇資料より抜粋

3)ゲーミフィケーション

最後はゲーミフィケーションです。

ヘルスケアというと毎日走ったり、食事制限したり、ストイックなイメージがありますが、そうではなく、「コンテンツを楽しむために体を動かしましょう」という働きかけですね。

たとえば、僕たちが提供している「さんぽジスタ」というアプリは、サッカーをテーマに対人で歩数を競い、勝利するとキャラクターがもらえます。また、先ほどお話した「歩いておトク」では、バーチャル旅行でさまざまな風景を楽しめますし、リラックマなどとのコラボツアーも開催しています。

ゲーミフィケーションの事例 四方 裕の登壇資料より抜粋

長期間サービスを利用してもらうために、「楽しむ」という視点はとても大切。DeNAヘルスケアの価値観は「楽しみながら健康寿命を延ばすこと」です。ゲームをはじめとした運営面の強みを活かし、今後もお客様が楽しみながら健康になれるヘルスケアサービスをつくっていきたいと思っています。

PPSJAPAN2019に出展していたGoogle社のブースのノベルティの写真

▲ APPS JAPAN 2019に出展していたGoogle社のブースにて。携帯が持ちやすくなるノベルティをもらいました。

まとめ

期間中、イベントには15万人を超える来場者が訪れ、大きな盛り上がりをみせたようです。

半年、1年といったスパンで利用し続けてもらったうえで、初めて具体的な成果が見えてくるヘルスケアサービス。楽しみながら使い続けてもらうために、四方をはじめとするエンジニアは行動ドライバなどの施策を取り入れ、日々知恵を絞りながら奮闘しています。

DeNAヘルスケアでは今後も今回のようなイベント参加や記事の発信を通じて、ヘルスケア事業の取り組みやサービス、メンバーについてご紹介していきます!