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大学院で生命科学の博士号を取った私が、IT企業であるDeNAヘルスケアに飛び込んだ理由

藤友 崇

「大学院では、新規肺癌治療標的遺伝子の探索をしていました」

そう語る学生のその後のキャリアには、どんな選択肢があるでしょう。
研究者でしょうか? それとも製薬企業? はたまた食品会社......?

このような進路ではなく、“IT企業であるDeNA” を選んだのが藤友 崇です。

「大学院の最後の年までは研究者になろうと思っていました」と語る彼は、どうしてIT企業という選択肢を取ったのでしょうか。大学で研究を続けていくことでは得られなかった、DeNAヘルスケアならではの面白さを聞きました。


研究者ではできない「お客様へのアプローチ」をゴールに

――今はどんなお仕事をしているんですか?

藤友 崇(以下、藤友): ヘルスケアサービス部R&Dグループの一員として「MYCODE Research」というゲノム研究プロジェクトを進めています。

国内の製薬企業や食品会社、アカデミアと共同で、病気・体質と遺伝子との関係について研究するのが主な業務です。最終的には多くの人の健康のために、研究結果をもとに事業化を考えたり、病気の予防法を開発したりすることを目指しています。

藤友 崇

――なるほど。どういったフローで業務を進めているんですか?

藤友: はじめに研究するテーマを決めます。テーマは、自社の資源や強みを生かせること、研究に協力してくださる製薬会社や食品会社が重点を置く領域等を鑑み決めています。

その後は、MYCODEサービスを通じて研究同意をいただいたお客様の協力を得て研究をします。研究結果は論文にしたり、学会で発表をしています。

――論文や学会発表と聞くと、研究室の教授や研究員のようですね。

藤友: はい。IT企業に属してはいますが、仕事の中心は研究です。ただ論文や学会発表がゴールではないんです。

大学や研究所で研究をする場合も、論文や学会発表により世の中に広く貢献することを目指していますが、その研究結果を実際に人々に届けるところまではできないんですよね。

一方現在は、研究結果を発表するだけではなく、研究によって得た結果を、サービスという基盤を使って、直接アプローチできるんです。これはDeNAならではで、やりがいと楽しさを感じています。

――実際にお客様に向けてアクションを起こせるのは大きな違いですね。ちなみに、どうして論文の作成や学会発表などをしているのでしょうか。

藤友: 1つは、研究の発表を通してDeNAヘルスケアの取り組みに興味を持っていただきたいからですね。

そしてもう1つは遺伝子研究の可能性を広げることです。

MYCODEのような遺伝子検査サービスは、研究者の間でもまだまだ認知されていないと感じるんです。なので、他の企業や研究機関に向けても「こういうデータを使うと、こういう研究ができる」とお伝えする役割もあると思っています。

藤友 崇

研究室の教授からもたらされた「IT企業との偶然の出会い」

――藤友さんはもともと大学院で分子生物学を学ばれていたと伺いました。そもそも、遺伝子の分野に進まれたのはなぜですか?

藤友: きっかけは大学生のときですね。当時は化学を専門に学んでいたんですが、化学って学問として扱う領域が広くなっているんですよ。元素とか化学式に関することもあるし、「生化学」といって生き物にまつわることも学ぶ。

4年間いろいろと勉強する中で「生命に関わる仕事ができたら意義があるかも」と思ったんです。人にとって最も大切なものは命かなと。誰もが大切に思っている分野に関われたらいいなと思い、分子生物学を本格的に学び始めました。

その後、安直なんですけど、がんで亡くなる方が多い現実の中で、「がんを理解すれば、人々の健康に貢献できるんじゃないかな」と思ったんです。そこで、大学院では肺癌に関わる遺伝子を突き止め、癌化のメカニズムを研究していました。

――大学院で研究をしていたころは、将来どんな仕事をすると考えていましたか?

藤友: 研究が楽しかったので「博士研究員(以下、ポスドク)」といって、任期が決まっている研究者になろうと思っていましたね。入学してからは「ずっとがんの研究をし続けていくんだろうな」と考えていました。

大学院時代、研究室生活の写真。真ん中が藤友 崇。

▲ 大学院時代、研究室生活での1枚。真ん中が藤友。

――今のところのお話では、そのままポスドクになる未来しか想像できませんね。

藤友: そうですよね。私も、当時はIT企業に入るなんて思ってもみませんでした。

ですが、大学院を卒業する年に、研究室の教授から「DeNAがMYCODEという遺伝子検査サービスをリリースしようとしていて、そのプロジェクトで学術論文を精査しながら遺伝子検査のアルゴリズムを構築するメンバーを探している」と相談があったんですよ。

この分野には興味がありましたし、学術論文の精査は研究でも日常的に行うものだったので、力になれるならと思い、アルバイトという形でDeNAのお手伝いをさせていただくことになりました。

――ということは、MYCODEの立ち上げ前?

藤友: そうです。当時すでにMYCODEの事業構想はできあがっており、遺伝子と疾患との関係について書かれた論文がたくさんあったので、まずはそれらをまとめてデータベース化するところから始めました。


見えることより、見えないことに感じた面白さ

――アルバイトではありますが、DeNAの第一印象はどうでしたか?

藤友: まずは動きのスピードに驚きました。大学院生だった私が持つ一般企業のイメージは、プロジェクトを進めるためには何度も会議が必要で、たくさんの関係者に決裁を取ったり、道のりが長いんだろうな、というものでした。

ですが、そういった煩わしさが全くなかったんですよね。コンテンツを作るにしても、サービスの機能を増やすにしても、とにかくフットワークが軽くていいなと思いましたね。

アルバイトを始めたのが2013年の10月でしたが、翌年の1月からは入社していました。

――数ヶ月のアルバイト経験だけで入社を決めたんですね! とはいえ、大きな方向転換のようにも思えますが、DeNAヘルスケアにどんな魅力を感じたのでしょうか?

藤友: それは素直に、to C サービスであるMYCODEのプロジェクトを進めていくのが面白かったからですね。もちろん、私にとっては大学での研究もとても面白かったです。博士号を取るほど、のめり込んでいましたから。

ですが、研究の先が見えはじめてしまったんですよね。

――先が見えるとは?

藤友: 研究はある程度指導教官が立てたテーマにしたがって実験をして、論文を書いて、という繰り返しであることも多いので、どんなキャリアを積んでいくのかということが予測できてしまうんです。険しく厳しい道ではありますが、誰も通ったことがないキャリアパスではないんですよね。

その点、MYCODEは「遺伝子検査サービス」という、日本ではほとんど事例のない新しい挑戦。さらに私が希望している生命や健康というジャンルということもあり、アルバイトとして関わる中でも、「これからどうやってローンチまで進めていこうか」と、日々ワクワクしてましたね。

藤友 崇

――なるほど。でもやはり、大学院での研究とは違う点が多いように思いますが......。

藤友: そうですね。大学院では朝から晩まで研究室にこもって、ひたすら研究を続けていましたが、DeNAでは共同研究のパートナーになる企業に話をしに行ったり、契約を結んだり、研究の内容を提案するなど、本当にいろいろな仕事ができるんです。

一般企業だったら当たり前なんでしょうけど、私にとっては新鮮で、研究では経験できないことを習得できる魅力がありました。

――なるほど。研究職として入社しても研究だけではない業務があり、それがまた魅力だったんですね。

藤友: はい。外部の方だけでなく、サービスを利用くださるお客様と接点があることも嬉しかったですね。ポスドクとして研究するだけでは、お客様との距離が遠いんです。

――どういうことですか?

藤友: 研究者の場合は、その研究によってお客様が抱える問題の糸口を見つけることができても、提示まではしてあげられない。直接手応えを感じられることがあまりないなと思っていました。

その点、DeNAヘルスケアでは研究結果を生かして、サービスやプロダクトとして形にするチャンスがあり、お客様に直接アプローチできるんです。時にはお客様からフィードバックが返ってくることもあって、手触り感が得られるのはとても魅力的だと感じたんです。

もちろん、研究者の仕事もとても意義深いことだと思うのですが、私はお客様と密に関わって、自身の研究を活かしながら実際にアプローチするほうが楽しいんですよね。


専門家ばかりじゃないから踏み込めた「新たな可能性」

――アルバイトで経験を積んだとはいえ、大学院からIT企業への就職に不安はありませんでしたか?

藤友: そうですね。同級生の多くはポスドクとして研究するか、製薬企業に進む人が多かったです。ですから就職を決意した後も、正直不安はありました。「大丈夫かな?」「価値観は合うかな?」と。

当時は、DeNAがヘルスケア事業に取り組んでいることもあまり知られてはいなかったので、大学の同期からも「IT企業で何するの?」などと言われたりして。事業の性質上、言えないことも多かったので「ローンチしたら驚かしてやりたい」と思ってましたね(笑)。

藤友 崇

――実際に就職して、価値観は合いましたか?

藤友: 実際、入社した直後はやはり乖離がありましたね。同じバックグラウンドを持つ方が少なかったので、研究者の中では当たり前なことが浸透していなかったり、使う言葉のニュアンスが異なったり苦労もありました。でも逆に、これまで当たり前にやっていたことを新たな視点で見る機会があるなど、畑が違うからこその発見もありましたね。

――藤友さんにとっても学びがあったのですね。

藤友: そうですね。さらに入社してよかった点としては「裁量権が大きいこと」です。

というのも、実は入社して数年経ったときに「自分って、同年代と比べてどれだけ成果を出せているのかな」と、気になったんですよ(笑)。特殊な道に進んでいることもあり、実際友人たちはどんな環境にいるのかと。

それで製薬会社出身の先輩に「僕と同年代の製薬会社の社員は、どんな仕事をしているんですか?」と聞いてみたんですね。そうしたら「基本的には、上司から降りてくる業務をこなしているよ」と。

その点、私はやるべき仕事を自分で決めて、ときには他のメンバーを巻き込んで物事を進めることも多くありました。

アルバイトのときから、DeNAのフットワークの軽さやスピードの速さを知っていましたが、改めて「本当に裁量が大きいんだなあ」と、腑に落ちた瞬間でした。

藤友 崇

――勤続年数に関係なく仕事ができるということですね。

藤友: そうですね。社内を見ていても、その文化は感じます。

たとえば、やりたいプロジェクトがあるときは、自分でプランを練って上司に相談します。すると「できるできない」ではなく「やるためにはどうすればいいか」と建設的な話をしてくれるんです。上司から指示されるだけではなく、自ら考えて動くことができます。

裁量が大きくて、仕事が進むスピードも速い。さらにお客様に直接アプローチできるので、やりたいことはどんどん膨らみますよね。ほんと、自分がもう1人欲しいくらいです(笑)。


「新しいことを受け入れる」「さまざまな業務を楽しめる」
その姿勢が、レールから外れるカギに

――なかでも最もやりたいことは何ですか?

藤友: 私たちの研究にもとづいたサービスやプロダクトの開発をしたいと思っています。

MYCODE Researchでは、研究同意をいただいたお客様の協力を得て研究を進めていますが、これらを事業化に結びつけられたらなと。

いくつかのプロジェクトはもう動き出しているんです。たとえば、iPS細胞を用いて「非アルコール性脂肪性肝疾患」、つまりお酒を飲まない方の脂肪肝と遺伝子との関係を調べるために、東京医科歯科大学、横浜市立大学と共同でバイオマーカーの探索をしています。その研究成果から、非アルコール性肝疾患を早期発見するための方法を開発して事業化できたらいいですね。

――やりたいことができる環境があると、生き生きと働けますね。

藤友: そうですね。DeNAのヘルスケア事業はまだまだ黎明期です。なので、やりたいことに挑戦できる反面、環境やシステムなど、整備不足な面もあるかもしれません。

私自身は、そんな未完成な環境の中で倫理面のレギュレーション構築や、共同研究者とのやり取りなどを楽しみながら学べたことがよかったと思っています。これは間違いなく、研究室ではできない経験なので。

藤友 崇

――最後にどんな人材にジョインしてほしいですか?

藤友: ドメイン知識を持ちながらも、さまざまな業務をすることを楽しめる方はいいかもしれません。機能面も含め、大手の研究施設と比べると足りない部分は確実にあります。そこに目がいってしまう方はカルチャーフィットしないかもしれません。

また、失敗を楽しめる方も嬉しいですね。やはり研究は、失敗することも多々あるんですよ。新しいサービスを創ろうとするとなおさらですね。落ち込んでいたらきりがないので、「お、こんな結果が出たのか。面白いな」と思える方に来ていただきたいですね。 積極果敢にチャレンジできる方だったら、存分に能力を発揮できるはずです。

そんな方と一緒に働けると、私自身も日々ワクワクできそうです。


<プロフィール>

藤友 崇(ふじとも たかし)
DeNAライフサイエンス ヘルスケアサービス部 R&Dグループ

1986年、北海道札幌市生まれ。2005年北海道大学工学部入学。同大学を卒業後、東京大学大学院へ入学し、博士課程を修了。大学院卒業の年にMYCODE立ち上げにアルバイトとして参画し、そのままDeNAへ入社。MYCODEのサービスローンチまでは遺伝子検査のアルゴリズム構築業務に従事し、現在はMYCODEで取得した遺伝情報・ヘルスデータを活用した研究『MYCODE Research』のプロジェクトを推進。趣味はYoutubeの動画鑑賞。


執筆:緒方 優樹 編集:八島 朱里 撮影:杉本 晴
※本記事掲載の情報は、2019年7月23日時点のものです。