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DeNAヘルスケアは、もっとおもしろくなっていく。|私がここにいる理由

砥綿 義幸(とわた よしゆき)

「ヘルスケア事業はもっとおもしろくできるし、パートナー企業からそれを期待されていることも感じています」

2020年からDeSCヘルスケアの事業開発部長、4月から取締役に就任した砥綿義幸はそう言います。

これまでDeNAでスマホ版の「モバゲー」プラットフォームの立ち上げや、マーケティング部の統括、そして女性メディア『MERY』など、多彩な事業の現場をみてきた砥綿。いま彼は、ヘルスケア事業で、何を成し遂げようとしてるのでしょうか?

ヘルスケア事業本部の“これから”と、“目指すチームのかたち”をうかがいました。


DeNAは「とがって」いながら「ちゃんとして」いる。


――いま就いている事業開発部長の仕事を、教えてもらえますか?

砥綿義幸(以下、砥綿): 保険会社や製薬会社などの他業界とアライアンスを組み、我々が持つアセットを使って新しいビジネスを創り出す。それがミッションです。

――アセットとは、ヘルスケアエンターテインメントアプリ『kencom』などのサービスや、それにまつわるヘルスケアデータなどですか?

砥綿: 加えてDeNAグループ全体のアセットも、です。たとえばロシュ・ダイアグノスティックス社との取り組みで、国内の子宮頸がん検診の受診率向上を目指す「Blue Star Project」を進めています。

「Blue Star Project」では特設サイトを開設し、子宮頸がん検診への理解を促進することを目的としたコンテンツを配信するほか、プロジェクトのモデル地区である横浜市内の子宮頸がん検診施設の一覧を掲載しています。また、プロジェクトについて多くの方に共感いただけるようInstagramを活用したキャンペーンを積極的に展開しています。昨年10月の公式Instagram開設以来、子宮頸がんや検診に関する投稿は2,000を超え、キャンペーンアカウントでは異例の盛り上がりをみせるなど、手応えを感じられています。

また、そうしたデジタルマーケティングやキャンペーン企画と運営、ベイスターズに代表されるリアルなビジネスといった「DeNAの得意分野」が、製薬や保険業界の企業の方々にとくに価値を感じてもらっている実感がありますね。

――一方で、業界の特徴として、IT企業とのアライアンスに慎重な面はないですか?

砥綿: そこはスムーズに感じますね。創業者の南場(智子)の思いからスタートしたことが広く知られていること。ソーシャルゲームなどしっかりスケールを果たした実績があること。また、ヘルスケア事業を5年やりつづけてきたことなどから「新興企業だけど、ちゃんとしているよね」という評価をいただいている気がします。


砥綿 義幸(とわた よしゆき)

DeNAに転職してすぐ「マネージャー失格」に。


――新卒で入ったのは日系大手のシステム会社だったそうですね。

砥綿: はい。自治体向けのパッケージソフトを売る営業をしていました。競合の動きを探り、根回ししながらクロージングまで2年以上かかるような営業。そこでの経験は、保険会社や製薬会社といった大きな組織とお付き合いするうえで活きている面があるかもしれないですね。

ただ当時は仕事が楽しい一方で、もっと広い世界が見たい、という思いが強くなってきました。若さと勢いがあったこともあって、2006年、まだ社員数が200人程度だったDeNAに、28歳で転職したんです。

――最初の配属は、「モバゲー」の営業だったとか。

砥綿: 広告営業でした。前職での長期、かつダイナミックな営業プロセスに比べると、シンプルで売りやすかった。結果もそれなりに出せて「おれデキるじゃん!」と、調子にのっていた時期でしたね。

――2年目には、グループリーダーに就任したとか。

砥綿: そうです。そして大失敗を(苦笑)。当時、天狗になっていたうえに、初めてのマネージャー職でプレッシャーも大きかった。気負いもあって、ゴリゴリに部下をしめつける、マイクロマネジメントをしてしまったんです。

上司に呼ばれて「降格だ」と。万能感にあふれていた若造のマネージャーが、降格してそのチームに居続ける。拷問でしたね。すさまじい無能感を感じ、落ち込みました。

ただ、それがよかった。

――よかった?

砥綿: はい。「人をみて」「感情に向き合って」いかなければ、組織は決して動かないことを学ぶきっかけになりましたから。

そのときの上長がどんなふうに人と接しているか。周囲はどんな言葉で動くかを学んだ。マネジメントや心理学の本なども手にとって、とにかく真摯に勉強するきっかけを得られました。


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――学びなおして、変わることができた。

砥綿: 恥ずかしいほど変わりましたね。人の話を聞く、人によって話し方を変える。相手の立場になって考える――。すべてあたり前のことですけどね。あきらかに周囲との連携が変わった。半年後、上司がまたリーダーにあげてくれ、頭が下がる思いでした。

――その後は2011年から「モバゲー」のスマホ版プラットフォームの立ち上げを担当し、事業統括に。1,000億円以上の事業規模で多くのメンバーをみていたそうですが、挫折が活きた感じでしょうか?

砥綿: いや。そのときはむしろ凄まじいソーシャルゲームの拡大期で、何をやってもうまくいっただけかなと。何が自分の力なのか、事業がこれだけ伸びたタイミングではよくわかりません(笑)。

むしろ、マネジメントの挫折経験が生きたのは、その後、マーケティング本部を任されたときでした。このときの僕のミッションは大規模な横断部門を全社視点で最適な形に見直すことだったんです。

――どのような形になったのでしょうか。

砥綿: 検討の結果、共通部門としてのマーケティング機能を大幅に縮小し、各事業部につけることで、より事業にコミットする形に変更することを決めました。 DeNAのたくさんの事業に関わることができることに魅力を感じて入社したメンバーも多くいましたので、マネージャーと連携しながら、ひとりひとりと向かい、丁寧にプロセスを進めていきました。

20代の頃のイケイケなままのマネジメントをしていたら、「もう決まったことなので」と上から言い放っちゃったと思います(笑)。

――そうして広告、ソーシャルゲーム、マーケ部再編を経て、『MERY』に行ったんですよね。

砥綿: そうです。『MERY』の急激な成長と、突然の事業停止、そして復活を見届けたのち、僕はDeNAに戻りました。その後、ヘルスケア事業にジョインさせてもらったんです。


砥綿 義幸(とわた よしゆき)

――さまざまな事業展開をしているDeNAの中でも、ヘルスケア事業を選んだのはなぜでしょう?

砥綿: 多彩なDeNAの事業をみてきた経験からしても「いまヘルスケアが一番おもしろそうだな」と感じたからですね。

――おもしろそう。具体的にはどういうところに魅かれたのでしょう?

砥綿: まずやっぱり取り組むべき社会課題としての大きさがあります。日本は2025年には超高齢化を迎える。そのときには医療費が現在の40兆円から50兆円にまで膨れ上がるといわれています。

長生きしたい、という個人の理想と、医療費負担の増加、という社会課題の解決に向けて、ぼくたちは「健康寿命を延ばそう」というアプローチをとっています。 そしてヘルスケア領域には、医療だけでなく、保険や製薬など多くの産業がかかわって、マーケット規模も極めて大きい。

この社会的意義のある巨大マーケットへの挑戦を、エンターテイメントに向き合ってきたDeNAならではの戦い方で挑む。僕自信も肌身で得てきたゲームやメディアやデジタルマーケティングのあらゆるノウハウで活路を見出せる。それってめちゃくちゃワクワクする挑戦ができる。事業の意義を感じながら大きなことに挑めるチャンスは、なかなかないと思う。その面白さですよね。


ヘルスケアチームが目指す、3つの姿勢。


――実際にジョインされて、どう感じました?

砥綿: 思った以上に優秀な個性が揃っているなと。霞が関の一線級で働いていた人、ゲーム一筋で作ってきた人、まったく違う業界の営業トップだった人、製薬会社の研究員など、バックボーンがバラバラの才能が「健康寿命の延伸」というひとつのビジョンに共感して、集まっている。 ただ、「健康寿命の延伸というビジョンは、正し過ぎるし、実現するための施策もあまたある。それだけに「戦線」が拡大しすぎる面もあるんです。

――手掛けるべき事業が多くなりやすいんですね。

砥綿: だからこそ、改めてビジョンを実現するための戦略を明らかにし、方向性を絞ろうと動いています。

また、チームをひとつにするために理想のチーム像を掲げています。それが「たくさんの人にデライトを届ける」「実現する強さを持つ」「おもしろさを大切に」の3つです。この3つが、先に述べた、ヘルスケア事業のワクワクする挑戦を、大きく成功させるための重要なピースになるのかなと考えています。

――3つのチーム像、それぞれについて教えて下さい。1つ目の「たくさんの人にデライトを届ける」とは?

砥綿: やっぱり社会のためになることをして、世の中の人たちを少しでも幸せにする。それを最初にチームの目標として掲げ続けていきたいということですね。ヘルスケアという領域だから、というだけではなく、すべての事業はそうした高いレベルの価値提供ができなければ存在意義がない、と考えています。チームにはそんなプライドと物差しを常にもって動いてほしいなと。それがないと容易にP/Lのプレッシャーに負けてしまう(笑)。

――なるほど(笑)。2つ目の「実現する強さを持つ」は?

砥綿: ただ、いくら「健康寿命を伸ばすんだ!」と社会的意義を声高に叫んでも、収益をあげ続けなければ、事業が継続できない。それはお客様に不誠実なことだと思うんです。しっかりと売上、利益を出す、という「強さ」を保ち続けることで、多くの方々に幸せを与えられる組織じゃないといけないと思っています。

――最後の「おもしろさを大切に」というのがユニークですね。

砥綿: 僕は最も大切だと思っています。人はおもしろいところに集まりますからね。

もちろん、おもしろさの形は人それぞれで「ゼロからイチをつくること」に面白さを感じたり、「儲かっていないとおもしろくない」という人もいると思います。ただ、ひとつ共通しているのは、ぎゅっと歯を食いしばっているしかない場所ってつまらないし、そこでは新しい発想も、「やってやろう」という意欲も生まれないと思っているんです。

図にすると、こんな感じで……。


砥綿 義幸(とわた よしゆき)

事業における社会的な「意義」と、ビジネスとしての「インパクト」の大きさ、そこに自分たちにしかできない戦い方をしよう、という「自分らしさ」。これがベースなんだけど、さらにここに、「ちゃんともうかる」ことと「心のゆとり」、ゆとりから生まれる「+αのたのしさ」が欲しい。しっかりとお金を作ることができて、仕事に面白さを感じられないと、事業の継続ってできない。


砥綿 義幸(とわた よしゆき)

もっといえば、会議でも、雑談でも、メールの文面でもいいけれど、いつでもふっと笑いを忘れずに入れられるようなゆとりのあるチームでいたい。「キャッキャ、キャッキャ」と笑いあえているチームこそが、最強だと思っているのでね。

――「楽しそうなところに人が集まる」「継続できる」というのは共感します。

砥綿: ですよね? あと、ほらヘルスケアそのものも、放っておくと「健康のために何かをガマンする」とか「辛いトレーニングを続ける」とか、少しワクワクしない方向になるじゃないですか(笑)。

まったく同じで、どんなことも「楽しくないと続けられない」。僕ら自信が楽しく前進し続けていたら、DeNAのヘルスケア事業はもっとおもしろいことになる。そしてしっかりお客様への価値提供を、必ずずっと続けられる。そんなふうに、事業もおもしろさも継続し続けられるチームや、会社にしていきたいんです。僕はそのためにいま、ココにいるんですよ。


砥綿 義幸(とわた よしゆき)

<プロフィール>

砥綿 義幸(とわた よしゆき)
DeSCヘルスケア 取締役/事業開発部 部長

日系Sierへ入社後、2006年にDeNAへ入社。
その後、広告事業、ソーシャルゲームプラットフォーム事業、マーケティングを統括。小学館とMERYを立ち上げ、2020年1月よりヘルスケア事業に参加。4月よりDeSCヘルスケア株式会社取締役に就任。
妻・娘と日々たのしく幸せに暮らす。趣味はサウナ。


執筆:箱田 高樹 編集:八島 朱里 撮影:小堀 将生
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